響きの森文京公会堂 文京シビックホール

~2018年3月16日(金)「夜クラシックVol.16」~荘村清志(ギター)福田進一(ギター)林 正子(ソプラノ)スペシャルインタビュー

ギター 荘村 清志 Kiyoshi Shomura

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©得能通弘 CHROME

49歳よりギターを始める。1963年に巨匠イエペスに認められ、翌年スペインで師事。
67年と68年にはヨーロッパ各地でリサイタルを行ない、69年の日本デビューで、「テクニック、音楽性ともに第一人者」との高い評価を得た。71年には北米で28に及ぶ公演を行い、国際的評価を不動のものにした。74年にはNHK教育テレビ「ギターを弾こう」に講師として出演し、一躍全国にその名と実力が知られることになった。
2007年NHK教育テレビ「趣味悠々」のギター講師として再登場し、改めて日本ギター界の第一人者としての存在を強く印象づけた。2008年ビルバオ交響楽団の定期演奏会に出演。同団とは《アランフェス協奏曲》を録音、09年にCDをリリース、日本ツアーのソリストとして同行し好評を博した。
2015年10月にはイ・ムジチ合奏団と共演、レコーディングを行い、ジュリアーニ、ヴィヴァルディのギター協奏曲を含むアルバムが16年1月にリリースされた。17年から19年のデビュー50周年に向けてギターの様々な可能性を追求する「荘村清志スペシャル・プロジェクト」(全4回)に取り組んでおり、第2回は本年6月に東京オペラシティコンサートホールにてcoba、古澤巌、錦織健との共演が予定されている。現在、東京音楽大学客員教授。

ギター 福田進一 Shin-ichi Fukuda

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大阪生まれ。1977年に渡仏。パリ・エコールノルマル音楽院を首席で卒業。1981年パリ国際ギターコンクールでグランプリ優勝。以後35年、ソロ・リサイタル、主要オーケストラとの協演、超一流ソリストとの共演を重ね、世界を舞台に意欲的な活動を展開。2017/18年シーズンには、スペイン、ロシア、北米へのツアーが予定されている。
ディスコグラフーはすでに90枚を超え、スペイン音楽第2集「セビリア風幻想曲」が、平成15年度第58 回文化庁芸術祭賞優秀賞を受賞。2014年にはナクソス・レコードより「日本のギター音楽シリーズ」をワールドワイドでリリース開始。
演奏活動の傍ら、教育活動にも力を注ぎ、現在、上海音楽院、大阪音楽大学、広島エリザベト音楽大学、昭和音楽大学の客員教授を務める。
2007年度外務大臣表彰を受賞。2011年度第62回芸術選奨文部科学大臣賞受賞。
東京国際、イタリア・アレッサンドリア国際、GFA(全米)国際、ポーランド・ヴロツワフ・ギターマスターズなど、名だたる国際ギターコンクールの審査員を歴任。

ソプラノ 林 正子 Masako Hayashi

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©anju

東京藝術大学及び同大学院修了。学部在学中に安宅賞受賞。二期会オペラスタジオ修了。さらにジュネーブ音楽院にて研鑚を重ね、2004年ソリスト・ディプロマを取得。これまでに『コジ・ファン・トゥッテ』フィオルディリージ、『椿姫』ヴィオレッタ、『リエンツィ』イレーネ、『ラ・ボエーム』ミミ、『タンホイザー』ヴェーヌス等、多くのオペラに出演。東京都交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団など、国内主要オーケストラの定期演奏会等でソリストとして活躍。また、二期会公演や内外の著名歌劇場との共同制作オペラにも多数出演し、艶のある美声とスケールの大きな演唱は常に高い評価を受けている。2016年11月、東京二期会・ライプツィヒ歌劇場提携公演・リヒャルト・シュトラウス『ナクソス島のアリアドネ』ではプリマドンナ/アリアドネを務めた。フランス在住。二期会会員。

林正子オフィシャルウェブサイト
http://www.axonentertainment.co.jp/masakohayashi/

取材・文:高坂はる香 写真:三浦興一

ギター音楽には枠がないのですから。

——今度の「夜クラシック」公演では、旧知の仲である荘村清志さんと福田進一さんのギターデュオに、初めてソプラノの林正子さんが加わっての共演となります。

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荘村:シンちゃん(福田)とは、30数年来の飲み友達なんです。一緒に演奏するようになったのは、13年前からですが。

福田:ギターという楽器にフォーカスした音楽祭をやりたいと考えていたところ、Hakuju Hallからのお声がけでギター・フェスタの話があがったのです。そのとき、清志さん(荘村)なら、きっとこういう企画を一緒にやってくれるんじゃないかと思ってお誘いしたのがきっかけ。一緒にステージに立ったらとてもうまくいって、以来ずっと共演が続いています。

荘村:年齢的にも一緒にやりはじめるのにちょうどよかったのかもしれません。若い頃は自分自身のことに必死ですが、だんだん自分の世界ができて落ち着いてくると、相手の良いところをより実感できるようになりますからね。

福田:今回は、その真ん中に林正子さんが立って歌ってくださるということで、我々も気合いが入っています。

林   :お二人のギターの巨匠と共演できる機会なんてなかなかないので、すごくうれしいです。私にはドイツもののイメージがあるかもしれませんが、実はスペインものをもっと歌いたいという想いがずっとありました。というのも、両親が趣味でタンゴをやっていて、タンゴが自然に流れている環境で育ったので、スペイン系の音楽に思い入れが強いのです。今回は、グラナドスやファリャの歌曲を歌いますが、共演する中でお二人にいろいろ教えていただける良い機会だと、楽しみにしています。

荘村:いえいえ、林さんの歌いたいように歌っていただければ、我々はしっかりと伴奏をつけていきますので。

林   :そうすると、私、どこまでも自由に行ってしまいますよ(笑)!

福田: いいんですよ、ギター音楽には枠がないのですから。アンサンブルでも、即興的な要素が強く、自在に編成を変えることも許されています。だからおもしろいんですよね。今回も、林さんの歌に、ギター2台でつけるか、曲によってはより自在な表現のために1台でつけるか、これから検討していくつもりです。ギターの場合、演奏者の人数が多いときよりも、少人数で切り詰めた音を即興的に紡いでいったほうが、迫力のある音楽が生まれることがあるんですよね。清志さんとのアンサンブルは、その辺りの呼吸を合わせるのになんの苦労もありません。林さんは、その上に気持ちよく乗っかって歌ってください!

ギターは音量が決して大きくなく、繊細な表現こそが魅力の楽器です。

——今回、オープニング曲のドビュッシー「月の光」はギター2台で、そして後半には林さんの歌が加わって、同じくドビュッシーが書いた歌曲の「月の光」が披露されますね。

林   :「ベルガマスク組曲」の中の「月の光」は誰もがご存知だと思いますが、歌曲のほうは知らない方が多いですよね。お客様がどんな反応をなさるのか、楽しみです。

荘村:ピアノ曲をギター2台にアレンジした「月の光」では、とても柔らかい音の表現を楽しんでいただけると思います。暗いステージで演奏するということだから、ムードがあって、お酒でも飲みたくなりそうだね(笑)。

福田:男二人で弾く曲でいいムードになってもなぁ(笑)。

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——林さんは普段、オペラなどでオーケストラと歌うことも多いと思いますが、ギターのような楽器と共演することの難しさはどんなところにありますか?

林   :とにかく、音量に気を遣わないといけません。ギターは音量が決して大きくなく、繊細な表現こそが魅力の楽器です。それに対して私、“120デシベルの女”なので。

福田:120デシベルってかなりの音量ですよ。車の走る音で80デシベルとかいわれますよね。

林   :ええ……。自宅の練習室の防音工事をするにあたって、担当の方に外の路上で歌声の音量を計っていただいたら、「林さん、大変です! 120デシベルあります! 例えるなら、ご家族の方は飛行機のジェットエンジンの横で生活されているようなものですよ」って(笑)。即、防音工事をすることになりました。

荘村:それはすごいですね。大きなホールで歌うときは声量が求められるでしょうけれど、小さなホールのときはまた状況が違うでしょう。

林   :はい、最近ちょうどある企画のため、サロンサイズの会場で、小さな声でいかに充実した表現をするかを追求しています。今回のギターとの共演も、まさにその延長線上の試みになると楽しみにしています。

毎回同じだと、つまらないですからね。

——前半には、荘村さん、福田さんそれぞれのソロの演奏もあります。どのように選曲されたのでしょうか。

福田:僕は、ピアソラの「ブエノスアイレスの春」を演奏します。これは、1台のギターでも充分な迫力がある、タンゴの名曲です。自分が初めてブエノスアイレスに行ってから20年経ったという時の流れも意識して選曲しました。

荘村:僕が弾くのは、ピポーの「歌と舞曲」。僕の師匠であるナルシソ・イエペスに捧げられた作品です。何十年と弾き続けてくる中、演奏が変化していることを感じる曲なので、またここで取り上げようと思いました。

——お二人は、お互いのギターのどんなところがお好きですか?

荘村:シンちゃんは、自分の音楽を主張しながらも、共演者の音を本当によく聴いています。こちらが即興的に何かをやっても、完璧にピタッとつけてくれる。だからこちらがメロディを演奏しているときなど、安心して遊んだり歌ったりすることができるのです。

福田:清志さんの音楽は個性が確立されていて、“どこを切っても荘村清志”、まるで金太郎飴ですからね。安定感も抜群で、何が起きても動じません。そして一緒に演奏していると、今日はこういう感じだよ、と楽しく音で話しかけてきてくれるので、僕も何かを返す。そんな会話を重ねているという感じです。

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荘村:毎回同じだと、つまらないですからね。

福田:2人で、舞台の上で将棋をさしているのをお客さんに見てもらっているみたいな感じかもしれませんね(笑)。そういうコンサートって、楽しいんじゃないかなと思うんですけれど。

荘村:僕たちは濃いダシだ、“昆布ダシ”と“かつおダシ”だって、前に言ってたよね。

福田:そうそう、良いスープを作ろうと思ったら、ダシ1種類では物足りないから(笑)。

林   :それじゃあ私、フォン・ド・ボーで!

福田:いやぁ、フォン・ド・ボーはうまく混ざらないでしょう。林さんは、具になってください(笑)。

——この様子だと、当日はトークも盛り上がりそうですね。本日はありがとうございました!

 荘村清志 福田進一 林 正子 スペシャルメッセージ

プロフィール

取材・文 高坂はる香

音楽ライター、編集者。大学院でインドのスラム支援プロジェクトを研究。その後2005年よりピアノ専門誌の編集者として、ピアニストや世界の国際ピアノコンクール等の取材を行う。2011年よりフリーランスとして活動。雑誌やCDブックレット、コンクール公式サイトやWeb媒体への寄稿のほか、
「クラシックソムリエ検定公式テキスト」の編集などを手掛ける。
HP「ピアノの惑星ジャーナル

夜クラシックVol.16

2018年3月16日(金)19:30開演 文京シビックホール  大ホール

公演情報

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